2017年(平成29年)7月31日 月曜日 徳洲新聞 NO.1093 四面
神経救急の診療センス養う
札幌東徳洲会病院
第6回SENCE開催
札幌東徳洲会病院は6月17日、第6回SENCEを開催した。これは増井伸高・救急科部長が考案した教育プログラムで、めまいや脳卒中など神経救急領域の診療センスを身に付けることが目的。同院内外の医師、薬剤師らに加え学生12人を含む42人が参加し、スキルの習得に励んだ。
札幌東病院内外から42 人が参加し研鑽
SENCEはSapporo East Tokushukai Hospital Neurologic Course for Emergency の頭文字を取って命名。めまいや脳卒中などは、脳神経外科や神経内科の専門医でなくとも初期対応を求められるケースがある。そこで札幌東病院の増井部長がコースディレクターとして、神経救急を体系的に学べるプログラムを考案。研修医をメインに薬剤師、医学生なども対象とし2012年から毎年開催している。
コースディレクターの増井部長
第4回から導入したE-learningを今回も活用。参加者は事前にインターネット動画サイトのYouTubeにアップされた講義動画を閲覧、学習して本番に臨んだ。当日は実技などのグループワークに時間を割き、より理解を深めることができた。
講師は同院救急科の増井部長、佐藤洋祐医師、松田律史医師(ともに後期研修5年目)、松本悠医師(後期研修3年目)が担当。今回は前回までと比べ、講師陣に若い医師を立てた。増井部長は「プログラムが成熟してきたので、誰が講師を務めても大丈夫です。各講師がベースの内容に自分なりのアレンジを加えて臨んでいます」と明かす。
めまいの診察を解説する佐藤医師
増井部長の開会挨拶の後、まずは佐藤医師が「画像に頼らない、明日から使えるめまい診察伝授」をテーマに、医師役、患者さん役、指導医役に分かれてグループワークを実施。患者さん役と指導医役には、あらかじめシナリオを提示。医師役がこれに対応して、めまいの診察方法を学んだ。眼振を確認する時に装着するフレンツェル眼鏡は本物が用意され、代表者が実際に装着して感想を語るひと幕もあった。
続いて、松本医師が「こんな時は何点?~NIHSSのトラブルシューター」をテーマにグループワーク。NIHSSとは脳卒中の重症度評価基準。医師役、患者さん役、記録係役に分かれ、評価リストをもとにヒアリングした。その際、リストの順に施行する、患者さんを誘導しない(何度も同じ命令を繰り返さない)など注意点が与えられた。医師役はリストをもとに「今日は何月何日ですか」、「頭を動かさずに私の指を目で追ってください」など自分で考えた質問や指示を投げかけ、理解を深めた。
麻痺患者の画像診断を解説する松田医師
3つ目のプログラムは、松田医師が「麻痺(まひ)患者のCT(コンピュータ断層撮影)/MRI(磁気共鳴画像診断)ピンポイント指摘読影術」と題し講義。医療面接と身体所見から画像を推定できること、また画像所見と発症時間の関係も推定できることを目的とした。参加者は提示された症例をもとに脳のアトラス(断面図)に推定病変を書き込み、松田医師が各症例を解説した。
明日から使える知識修得
グループワークでアドバイスする松本医師(右)
4つ目のプログラムは増井部長が「ERから専門医へつなぐ脳卒中治療アップデート」と題し、クイズ形式で講義を行った。「血圧管理」、「スコアリング」、「手術適応」、「くすり」、「その他」のジャンルごとに10点、20点、30点の問題を用意。参加者がジャンルと点数を指定し、提示された問題に対し全員が一斉に回答を掲げ、すぐに答え合わせをした。趣向を凝らした難問に会場は盛り上がりを見せた。
最後も増井部長が「軽傷頭部・頚部(けいぶ)外傷CTいつ取るの? 取らないの?」をテーマに講義。会場をA・Bブロックに分け、提示された症例がCT適応ならAブロック、適応外ならBブロックに移動して、楽しみながら学んだ。意見が分かれたのは小児のCT適応。ヒントが出されるたびにブロック間を移動する人もいた。増井部長は、小児は被ばくの問題を考慮する必要があるとし、データを示しながら説明した。
大盛り上がりのクイズ形式の講義
すべての講義を終え、全員に修了証を配布して閉会。札幌市内の徳洲会グループ外の病院から参加した初期研修医(1年目)は、札幌東病院で研修中の大学の同期に誘われたことを明かし、「札幌東病院の楽しさが伝わりました。神経救急を学ぶ機会は少ないのですが、明日から使える知識が満載で、とても勉強になりました」と満足した様子。