2018年(平成30年)6月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1137 一・二面
海外への医療支援を積極推進
徳洲会グループ
“生命だけは平等だ”の理念実践
徳洲会グループは“生命だけは平等だ"の理念の下、これまでアフリカやアジア、東欧、南米各国に対し、透析機器の寄贈や透析センターの開設支援、病院開設支援、看護学校の開設支援などを行ってきた。また徳洲会病院のスタッフが海外に出向き、手術手技など指導を行う一方、海外の医療従事者を徳洲会病院に招聘(しょうへい)、研修を行うなど多方面にわたり医療協力を実施。今号では徳洲会が取り組んできた国際医療支援の軌跡を総力特集する。なおNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)の災害医療支援活動については機会を改めて取り上げる。
「魚の釣り方をともに学ぶ」姿勢
徳洲会グループは「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」の実現を目指し、国内にとどまらず海外にも積極的に目を向け、主に開発途上国に対する医療支援を目標に掲げている。
タンザニアの透析センターでは10台の透析機器が順調に稼働
2003年以降、アフリカやアジアを中心に40カ国と医療協力の協定書を締結し、透析センターの開設支援などに力を入れてきた。医療資源が少なく透析医療が十分に整備されていない地域で慢性腎不全になることは、死を意味するためだ。
透析センターの開設支援では透析機器を寄贈したり、研修生として現地医療スタッフを徳洲会病院で受け入れ、透析医療を指導したりしている。
2005年のインドネシアを皮切りに、これまでアジアで5カ国、アフリカでは06年のチュニジアに始まり、これまで15カ国で開設支援した透析センターがオープンした。
リベリアと協定書締結時に湘南鎌倉病院の前で記念撮影
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方をともに学ぶ」――。これは徳洲会グループが国際医療協力を行う際の基本姿勢となっている。各国が自力で医療サービスに取り組めるようにするため、ノウハウの提供を重視しているからだ。
ハード面を整備しても、運用する医師や看護師などすべてのスタッフが知識や技術を習得しなければ、継続的なマネジメントは難しい。現地スタッフを日本に招聘し、徳洲会病院で研修を行うのはそのためだ。
この基本姿勢と同様に大切に守っているのが、「その国から1円たりとも持ち出さない」というスタンス。また、国民皆保険が未整備の国から病院開設の支援依頼があった場合、徳洲会は皆保険制度の導入を強くアドバイスしている。経済的な格差が医療へのアクセスの障害にならないようにするためだ。
20カ国で透析センター ジブチで新病院計画も
徳洲会グループ国際医療協力年表
2003年 | タンザニアと協定書締結 |
ウガンダと協定書締結 |
セネガルと協定書締結 |
2004年 | コンゴと協定書締結 |
ガボンと協定書締結 |
タイと協定書締結 |
ガーナと協定書締結 |
モーリタニアと協定書締結 |
ハンガリーと協定書締結 |
リビアと協定書締結 |
インドネシアと協定書締結 |
2005年 | バングラデシュと協定書締結 |
アラブ首長国連邦と協定書締結 |
レバノンと協定書締結 |
ケニアと協定書締結 |
エジプトと協定書締結 |
イエメンと協定書締結 |
ベナンと協定書締結 |
ガンビアと協定書締結 |
セルビア・モンテネグロと協定書締結 |
インドネシアの透析センター開設 |
2006年 | チュニジアと協定書締結、透析センター開設 |
マリと協定書締結 |
タイの透析センター開設 |
ブルガリアのソフィア徳田病院開設 |
タイの徳田看護学校開設 |
2007年 | モザンビークと協定書締結 |
2008年 | ナイジェリアと協定書締結 |
モザンビークの透析センター開設 |
2009年 | ジブチと協定書締結 |
2010年 | ジブチの透析センター開設 |
ルワンダと協定書締結 |
ネパールと協定書締結 |
ザンビアと協定書締結、透析センター開設 |
コートジボワールと協定書締結 |
2011年 | ギニアと協定書締結 |
ルワンダの透析センター開設 |
マラウィと協定書締結 |
ギニアの透析センター開設 |
レソトと協定書締結 |
モンゴルの透析センター開設 |
ラオスの透析センター開設 |
トーゴと協定書締結 |
タイの透析センター開設 |
ネパールの透析センター開設 |
ウガンダの透析センター開設 |
モーリタニアの透析センター開設 |
2012年 | ブラジルの徳田虎雄心臓病院開設 |
カメルーンと協定書締結、透析センター開設 |
ルワンダの透析センター開設 |
エチオピアと協定書締結 |
リベリアと協定書締結 |
2013年 | タンザニアの透析センター開設 |
スワジランドと協定書締結、透析センター開設 |
ガーナの透析センター開設 |
マラウィの透析センター開設 |
2014年 | トーゴの透析センター開設 |
韓国の京福大学校「徳洲会クラス」開設 |
2015年 | モンゴルの透析センター開設 |
2017年 | レソトの透析センター開設 |
2018年 | タンザニアで同国医師による初の腎移植 |
徳洲会のアフリカへの医療協力は03年9月のタンザニアとの協定書締結から始まる。これ以降、現在までに28カ国と協定を締結。内容は国により異なるが、透析センター開設支援や研修受け入れなど医療協力に関するものだ。
透析センター開設は06年6月のチュニジア(透析機器10台)からスタート。次いで08年12月にモザンビーク(同10台)、10年4月にジブチ(同15台)、同年10月にザンビア(同10台)など続き、17年1月のレソト(同10台)まで15カ国で開設支援を行った。
一方、アジアではアフリカに先立ち05年12月にインドネシア(バンダ・アチェで同5台、タバナンで同10台)で透析センターを開設。次いで06年2月と11年11月にタイ(06年は同80台、11年は同20台)、11年10月と15年10月にモンゴル(両年とも同10台)、11年10月にラオス(同10台)、同年11月にネパール(同10台)と、合計5カ国で開設支援を行った。
毎年2カ国での透析センター開設を目標としており、今年もケニアとリベリアでオープンする計画がある。国情が落ち着けばコンゴでも予定。新たな取り組みとしては、モザンビークの透析センター内に、故障した透析機器を持ち込んで修理するメンテナンスセンターの設置計画が浮上している。永続的に透析センターを運営していくうえで、メンテナンスセンターを設置する意義は大きい。
基本的に、透析センター開設支援や透析機器の寄贈を行う際には、現地の医師や看護師らが来日し、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、湘南藤沢徳洲会病院(同)などグループ病院で研修を実施。各国が自力でセンターを運営できるように教育・指導を行う。また、透析機器のメンテナンスや医療指導のために、日本から医師や看護師、臨床工学技士などが現地を訪れることもある。
透析機器以外にも、モンゴルに小児用呼吸器を寄贈、ブラジル、パラグアイ、エチオピア、コンゴ、アンゴラに医療用ベッドを寄贈している。
徳洲会は海外での病院開設にも尽力。06年には、ブルガリアの首都ソフィアに1016床の総合病院をオープンした。日本からの民間大規模投資の第1号病院であり、ブルガリアにとって30年ぶりの新病院開設。東ヨーロッパで最大規模の先進的な病院として同国の医療水準の向上に貢献した。
同院は多くの患者さんや医療関係者から高い評価を得た(16年6月にIHHヘルスケアグループ傘下入り)。
12年1月にはブラジルで、心臓外科の名医であるランダス・バチスタ医師が院長を務める心臓病院の開設を支援。周辺地域には心臓外科を有する病院がなく、従来、心臓手術を受けるには遠方まで行く必要があったが、同院の開院により医療環境が改善した。
現在、アフリカのジブチで220床の新病院建設プロジェクトを進行中で、20年の開設を目指している。今年2月、一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫理事長らが現地を視察。同国で国民保険と社会福祉を担うCNSS(社会保障基金)幹部と面談し、プロジェクトの推進体制や支援内容などを協議した。またCNSSが運営するクリニックを見学したり、同国の労働省や外務省、在ジブチ日本大使館を表敬訪問したりした。
ジブチで開設を目指す新病院の完成予定図
さらにルワンダ、ザンビア、モザンビーク、カメルーンで新病院建設プロジェクトを構想。ブルガリア、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、モンゴルでは病院経営支援や医師の研修などに協力。
こうした活動以外にも、タンザニアの腎移植プロジェクトをサポートし、研修の受け入れや現地での指導などに取り組んでいる。今年3月には首都ドドマにある病院で、現地医師による手術では同国初の腎移植を実施した。
アフリカ開発会議に出席各国要人と膝詰めで会談
トーゴのニャシンべ大統領(右)と会談する鈴木理事長
アフリカへの支援を進めるなかで、鈴木理事長とムワナタンブエ・ミランガ顧問(アフリカ担当)は16年8月に開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)に出席。鈴木理事長らはジブチ、ザンビア、トーゴ、ケニアの要人らと積極的に会談し、医療支援などについて協議した。
トーゴのフォール・エソジンナ・ニャシンべ大統領と会談した際には、12年に首都ロメの中央大学病院に開設した透析センターに対する徳洲会の支援について、大統領は鈴木理事長に「徳洲会から透析機器を寄贈していただき、多くの生命が救われました。心から感謝します」と謝意を示した。
レソトのレツィエ3世国王から感謝状を贈呈
また鈴木理事長らは16年11月、来日中のレソトのレツィエ3世国王の招きに応じ、都内のホテルで会談した。まず徳洲会側から、これまでの国際医療支援についてプレゼンテーションを行い、その後、鈴木理事長が透析機器10台と浄水装置の寄贈証明書を贈った。
これに対しレツィエ3世国王は「徳洲会はアフリカ諸国に対し、透析医療をはじめさまざまな医療分野で貢献してきました。とても感謝しています」と謝意を述べ、感謝状と記念のプレートや織物、コインを授与した。
韓国の京福大学校の入学式には鈴木理事長も出席
徳洲会は透析センターや病院の開設のほか、教育に関しても海外での取り組みを推進。06年にはタイのコンケーン市で看護学校の開設を支援。さらに、14年には韓国にある京福大学校医療保健学部看護学科に「徳洲会クラス」を開設した。
徳洲会クラスは同年2月、1期生40人が入学。このうち20人は昨年7月、来日し徳洲会施設で初めて臨地実習を行った。同クラスの学生は卒業までに韓国の看護師免許を取得し、日本語能力試験N1(幅広い場面で使われる日本語を理解できる能力)に合格したら、徳洲会病院にインターンとして勤務し、日本の看護師国家試験合格後、正式に徳洲会に入職する。
タタールスタン共和国で大統領官邸を表敬訪問する鈴木理事長(右から2人目)
このほか、徳洲会スタッフは各国を訪問し現地の視察や情報交換などを積極的に行っている。この1年でもベトナム、フィリピン、中国などを訪問、直近では5月末に鈴木理事長らがロシア連邦のタタールスタン共和国を訪れた。ルスタム・ミンニハノフ大統領を表敬訪問し、カザン市内のリハビリテーション病院や救急病院などを視察、さらにカザン医科大学で今後の医療協力をテーマに議論を交わした。