徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)6月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1189 一面

ホームケアクリニック札幌
在宅看取り600人を突破
自宅で最期望む末期がん患者さん支援

ホームケアクリニック(CL)札幌は2008年の開院以来、在宅で看取った患者数が600人を突破した。そのほとんどが末期のがん患者さん。丁寧な対応が好評で、登録患者数は間もなく1000人を超える。藤原葉子院長は「患者さん、ご家族の思いに応えていきたい」と意気込む。

徳洲会唯一の緩和ケア専門CL

患者さんの状態を確認する藤原院長(左)。リンパ浮腫研修も修了している 患者さんの状態を確認する藤原院長(左)。リンパ浮腫研修も修了している

ホームケアCL札幌は、近隣の札幌南徳洲会病院が行っていた在宅ホスピス・看取りを引き継ぐ医療機関として08年7月に開設、前野宏院長(現・札幌南病院総長)の下、徳洲会グループで唯一の在宅緩和ケア専門かつ24時間365日対応する「在宅療養支援診療所」として活動を開始した。

対象は通院が困難な在宅療養を希望する患者さん。「苦痛の緩和」を最大の目的とし、医療用麻薬などを用いて身体的な痛みを緩和するだけでなく、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛、いわゆる全人的な苦痛の軽減を図る。また、在宅生活を継続するためにセルフケアの方法を患者さんや家族に指導したり、看取りが近づいた患者さんの家族には死に至るまでの経過を丁寧に説明したりする。治療や処置はもちろん、患者さんや家族との会話にも多くの時間をかけるため、1軒当たりの訪問時間は最低30分。1時間を要することも珍しくない。患者さんが亡くなった後も遺族ケアの機会を設けている。

独居高齢者や高齢者のみの世帯が増えるなか、14年には在宅ホスピスボランティア「葉っぱの会」を設立。患者さんの在宅生活を支える環境づくりにも余念がない。16年に藤原院長が就任し、同年の診療報酬改定で新設された「在宅緩和ケア充実診療所」も取得した。

こうした活動と丁寧な対応で、コンスタントに患者さんが増加(図)。今年に入り、在宅看取りは600人、相談件数は2000件を超えた。登録患者数も6月10日現在で991人。いずれも9割以上が、がん患者さんだ。山崎美惠・看護師長(緩和ケア認定看護師)と下倉賢士ソーシャルワーカー(認定医療社会福祉士、介護支援専門員)は支持される要因に、高いスキルと、多様なニーズにスピーディーかつ柔軟に対応できる“チーム力”を挙げる。

「徳洲会の大ファンに」

クリニックには12人のスタッフが在籍(前列右から2人目が前野総長) クリニックには12人のスタッフが在籍(前列右から2人目が前野総長)

5月9日、藤原院長の患家訪問に同行取材した。患者さんは末期の前立腺がんを患う70代男性で、4月から同CLを利用。藤原院長は看護師と患者さん宅を訪れると、居間で患者さんや家族から最近の状態を聞き、ベッドへの移動を希望した患者さんを家族と協力して移した。その後、バイタル サイン(生命兆候)を測ったり、痛みを訴える部位を処置したりした。

最後に下肢の浮腫の状態を確認し、20分ほどかけてマッサージ。家族に患者さんの状態を報告し、訪問から50分後、患家を後にした。患者さんは処置を受けながら「在宅の良い点は自分の要望を伝えることができること。病院では時間がないので……」と吐露。

家族も「以前から脚が腫れていることはわかっていたので、とある病院で訴えたのですが……」と言い、続けて「札幌徳洲会病院形成外科でみてもらったところ、リンパが原因ではないかと指摘してくださり、マッサージの仕方や包帯の巻き方などまで教わりました。藤原先生を含め、しっかりと診てくださる徳洲会の先生方の大ファンになりました」。

看護師が訪問時に携帯するカバンの中身。バイタルサインの測定器具をはじめバルーンセット、採血キット、スキンケア・口腔ケア用品、身体のむくみを測るためのメジャーなど多様なケースに対応できるよう準備 看護師が訪問時に携帯するカバンの中身。バイタルサインの測定器具をはじめバルーンセット、採血キット、スキンケア・口腔ケア用品、身体のむくみを測るためのメジャーなど多様なケースに対応できるよう準備

藤原院長は血液検査や全体の様子から患者さんの最期が近づいていることを家族に伝えた。その後、5月17日に自宅で家族に見守られ、この患者さんは息を引き取った。

「お看取りにうかがうと、奥様が『泣きすぎて疲れたわ~』と笑いながら迎えてくださいました。何度も家で良かったと話されていました」と藤原院長。自宅で最期を迎える方とかかわることについて「悲しいばかりではなく、大切な方との思い出をたくさん共有できて、患者さんやご家族から満足された内容の言葉をいただくなど、やりがいがあります」と強調する。

「在宅緩和ケアについて、もっと早く知りたかったと言われることがよくあります。今後、相談しやすい場所の提供も含め、地域の方が、より利用しやすい環境づくりを目指します」(藤原院長)

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