直言
Chokugen
Chokugen
直言 ~
笹川 五十次(ささがわいそじ)
山形徳洲会病院院長
2020年(令和2年)1月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1220
山形市の人口は約25万人で、昨年4月から中核市となり、周辺自治体とともに約50万人の山形都市圏を形成しています。当院は2004年、JR山形駅を中心に半径4㎞以内に総合病院が8施設あるなか、9施設目の病院として開院しました。
山形県の医療を取り巻く環境も厳しくなってきました。山形県地域医療構想をもとに25年までに山形都市圏全体で約900床の病床削減が予定されています。山形市内でも17年に山形市立病院が57床、18年に県立中央病院が50床削減されました。ちなみに、全国で赤字が深刻な自治体病院ワースト50に山形県内の病院が5施設も入っています。
このような状況下で、マンパワーの少ない当院ができることは、現有の人員で設備を有効に利用することでした。
末期腎不全に対する血液透析は、開設時より受け入れていましたが、透析患者さんの高齢化が進んできました。日本透析医学会によれば、18年12月末現在で透析患者さんの平均年齢は68・75歳、新規透析導入患者さんの平均年齢も69・99歳です。さらに、要介護の維持透析患者さんの半数以上が独居あるいは2人暮らし世帯で、原疾患が糖尿病性腎症であることが多いため医療依存度が高く、介護施設などで受け入れてもらえないのが現状。患者さんやそのご家族が心身ともに疲弊し、治療放棄をする可能性もあります。
当院には90床の療養病棟があるため、医療依存度が高い維持透析患者さんを積極的に受け入れています。療養病棟はすべて維持透析患者さんで占められ、入院患者さんの医療区分は、つねに2と3が100%。一般に血液透析は週3回で月、水、金と火、木、土の2コースがあり、それぞれ午前と午後の部がありますが、午後の部は外来透析患者さんが敬遠するため空床が目立っていました。そこで、療養病棟の患者さんに午後の部で透析していただくことにより空床は激減、透析機器を効率的に運用できるようになりました。
重症で通院できない透析患者さんを受け入れる病院はいまだ少ないため、田林隆明事務長と高橋直人・医療相談員に山形都市圏外や宮城県内の病院へ情報提供に行ってもらったところ、紹介病院は県内のみならず宮城県からも増えてきました。透析登録患者数は230人を超えるまでに増加しています。
入院患者さんには快適な入院生活を過ごしていただけるように努力していますが、入院の時点で重症なことが多く、亡くなるケースもあります。その場合には、昼夜を問わず可能な限り、お見送りをしています。また、紹介してくださった病院への経過報告も必ず行っています。
スポーツ整形は、整形外科の大沼寧副院長の専門分野です。プロサッカーチーム「モンテディオ山形」のチームドクターを長らく務め、プロのアスリートやスポーツを愛する学生さんたちが多数来院されています。
18年に腱(けん)や靭帯(じんたい)の損傷・炎症を対象に、メジャーリーガーの田中将大投手などが治療を受け、注目されるようになった再生医療のPRP(多血小板血漿(けっしょう))療法については、当院が東北地方で初めて認可を受け、同療法を開始。19年には変形性膝関節症などの関節炎に対し、関節内に投与する次世代PRP療法のAPS(自己タンパク質溶液)療法もスタートしています。
当院は11年に臨床試験センターを開設しました。開設当初は治験の依頼がほとんどありませんでしたが、依頼された治験を確実に遂行するよう心がけた結果、現在では、徳洲会グループのなかでもトップクラスの実績を有するセンターとなっています。当院がかかわった治験から新薬が世に出ると、わが子の成長を見るような気分になります。
当院は開設以来、多くの職種で慢性的な人員不足に悩んでおり、グループの継続的な支援なしでは成り立たない状況です。以前は、新卒看護師がひとりも入職しない年もありました。しかし、奨学金制度のおかげで少数ではあるものの毎年、入職するようになりました。多職種に対する奨学金制度ができたことは、人手不足の地域の病院にとって大変ありがたいことです。患者さんに良質な医療を提供するには、職員の充実が欠かせません。一日も早く、その日が来るように努力を続けたいと思います。皆で頑張りましょう。