徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)11月01日 月曜日 徳洲新聞 NO.1311 3面

感染対策など知見共有
日本高気圧環境・潜水医学会
学術総会

第55回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会が10月15日から2日間、開催された。南部徳洲会病院(沖縄県)の清水徹郎・高気圧酸素治療部部長兼救急診療科部長が会長を務め、一般社団法人徳洲会が後援した。徳洲会グループからはシンポジウムやワークショップ、一般演題で計8演題を発表。コロナ禍で1年延期し2年ぶりの開催。那覇市内の会場には県外からの参加は発表者のみに制限し、オンラインとのハイブリッド開催となった。

清水・南部病院部長が会長

徳洲会グループのHBO治療の質向上に邁進(前列右から2人目が清水部長)

学術総会は高気圧酸素治療(HBO)の質と安全性の向上を推進・普及することを目的に、臨床や教育、HBO装置の管理・運用など多様な観点からの演題発表を実施。HBOは、高気圧環境をつくり出す装置内で、100%酸素を吸入し、全身に酸素を供給する治療法をいう。減圧症や末梢(まっしょう)循環不全、創傷、突発性難聴、骨髄炎や放射線障害など幅広い疾患に効果が期待できる。HBO装置には1人用の第1種装置と、複数人が入れる第2種装置がある。

清水部長は開会挨拶で「多くの方々の協力により、開催にこぎつけることができました。全体テーマは“次世代への継承”です。知見を次の世代につないでいくとともに、今回のハイブリッド開催の経験も今後に生かしていきたい」と語った。

新型コロナ対策はHBO領域でも切実な課題だ。シンポジウム1のテーマは「COVID─19とHBO」。徳洲会では宇治徳洲会病院(京都府)臨床工学科の石塚雄介副主任(臨床工学技士=CE)と南部病院臨床工学部の向畑恭子副主任(CE)が演題を発表、同院臨床工学部の赤嶺史郎技士長(CE)が座長を務めた。

宇治病院は第1種2台、南部病院は第1種と第2種を各1台運用しており、各施設で強化した感染症対策を紹介した。

HBO装置は同学会が制定する安全基準にのっとり、ハードの保守・点検や適切な運用による安全確保が欠かせない。最悪のケースでは装置が爆発し死亡事故につながりかねないためだ。ワークショップ1は「HBOにおけるインシデント事例」と題し、医療安全に焦点を当てた。宇治病院臨床工学科の太田雅文技士長(CE)と南部病院の宮城宏喜副主任(CE)が各病院での医療安全の取り組みや現状を発表した。

今回の学術総会のテーマは「次世代への継承」。いかに後進を育成し患者さんのために有効かつ安全なHBOを実践していくかが求められている。「次世代につなげるHBO…教育のあり方」をテーマとするシンポジウム2では、中部徳洲会病院(沖縄県)臨床工学部の池村昭仁主任(CE)が、新人教育やスタッフへの機器操作訓練の実施状況など教育体制を報告した。

一般般演題では、南部病院臨床工学部の玻名城尚主任(CE)が「耐圧能力・酸素耐性検査の実施状況とそれに伴うハード面の問題点」、名古屋徳洲会総合病院整形外科の仁丹克則部長が「治癒開始までに時間を要した化膿性肩関節炎に対して高気圧酸素治療法を用い治癒した2症例」、同院臨床工学室の岩澤伸明CEが「難治性潰瘍に対し高気圧酸素治療および人工炭酸剤浴を併用した治療経験」をテーマに発表した。

23徳洲会病院HBO運用

徳洲会グループはHBOに力を入れており、現在23病院がHBO装置を運用。グループ内には高気圧酸素治療部会(部会長:清水部長)を設置し、医師やCEら部会メンバーがグループの現状について共有を図り、課題の解決などを通じ底上げに取り組んでいる。

清水部長は「沖縄県では地域柄、減圧症が多く発生します。減圧症は緊急症例でありHBOが唯一の治療法ですので、手探りで感染対策を行い、治療を続けてきました。全国の多くの施設が同様に苦しい状況のなかで工夫を重ねてきました。そのような経験や工夫を今回、共有できたことは大きな意義があります」と総括。引き続き安全対策強化の重要性を呼びかけていく考えだ。

また赤嶺技士長は「災害時の対応も含め学会がマニュアルを作成し開示しています。まずは学会のマニュアルを順守しながら質と安全性の向上に努めることが大切です」と訴えている。

なお、学術総会の開催期間中に行われた日本高気圧環境・潜水医学会の社員総会で、清水部長は2022年度の同学会理事と学術委員会の委員長に選任された。次回は22年10月12~13日に佐賀県で開催予定だ。

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